2026年ミラノ・コルティナ五輪で正式種目として初採用される山岳スキー(スキーモ)。
登りと滑りを組み合わせた過酷な競技の見どころ、種目別ルール、使用ギア、
日本代表選手の現状と世界との差まで網羅的に解説します。
ミラノ五輪
2026年2月6日、イタリアのミラノ・コルティナで開幕する冬季オリンピックに、
初めて「山岳スキー(Ski Mountaineering / 通称スキーモ)」が正式種目として加わります。
スキーを履いて雪山を登り、滑り降りるタイムを競うこの競技は、ヨーロッパを中心に急速に競技人口を増やしているものの、日本ではまだ馴染みが薄いスポーツです。
本記事では、山岳スキーの基本ルールから種目ごとの違い、使用ギアの特徴、日本代表選手の現状と世界との力の差、さらに観戦ポイントまで、初心者でも理解できるよう詳しく解説します。
山岳スキー(スキーモ)とは何か|競技の基本概念を理解する
山岳スキーは、雪山に設定されたコースを登って滑り降りるまでのタイムを競う競技です。リフトやゴンドラを使わず、自らの脚力で山を登り、滑走技術とスピードで駆け下りる総合力が求められます。
競技の正式名称は「Ski Mountaineering(スキーマウンテニアリング)」で、略して「Skimo(スキーモ)」と呼ばれています。元々は山岳パトロールがスキーを履いて雪山を移動する手段として発達したものが、競技化されました。
競技の基本動作|登行・担ぎ・滑降の3要素
山岳スキーの選手は、コース上で主に3つの動作を繰り返します。
登行(ハイクアップ):スキーの裏面に「シール」または「クライミングスキン」と呼ばれる滑り止め素材を貼り付け、ヒールが自由に動くモードでスキーを履いたまま登ります。シールは後方へ滑らず、前方へは滑る特殊な構造で、効率的な登坂を可能にします。
担ぎ(ブートパック):スキーでは登れないほどの急斜面や岩場では、スキーを脱いでバックパックに固定し、ブーツのまま、あるいはアイゼン(爪)を装着して走るように登ります。この切り替え動作の速さが勝敗を左右します。
滑降(ダウンヒル):頂上や折り返し地点でシールを剥がし、ヒールを固定するアルペンモードに切り替えて、旗門が設定されたコースを滑り降ります。高速滑走の技術と正確性が求められます。
ヨーロッパで生まれた雪山文化の競技化
山岳スキーはイタリア、スイス、フランスなどのアルプス地域で発祥しました。険しい雪山を何日もかけて縦走する「スキーツアー」の文化が根付いており、その移動手段として磨かれた技術を競技化したものです。
現在、国際スキーマウンテニアリング連盟(ISMF)が統括し、ヨーロッパを中心に世界各地で大会が開催されています。2021年7月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2026年ミラノ・コルティナ五輪への正式採用が全会一致で承認され、世界的な注目を集めています。
山岳スキーの種目一覧|それぞれの特徴とルール
山岳スキーには大きく分けて5つの種目があり、それぞれ異なる魅力と戦略があります。ミラノ・コルティナ五輪では、そのうち3種目が実施されます。
スプリント|短期決戦の爆発力勝負
概要:標高差約100メートル程度のゲレンデを使い、登りと滑りを組み合わせたコースで争われます。トップ選手は約3分で完走する超短期決戦です。
コース構成:シールを貼ったスキーでの登坂区間、スキーを外して走る区間、旗門を通過する滑走区間が組み合わされています。スタートとゴールは同じ地点に設定されます。
レース形式:個人予選では20秒間隔で次々にスタートし、タイムで順位を決めます。予選通過者は6名1組のヒート形式で準々決勝、準決勝、決勝と進みます。スタート直後から激しい順位争いが繰り広げられ、一瞬のミスが致命的になる緊迫感が魅力です。
ミラノ五輪での実施:男女それぞれ実施され、出場枠は男女各24名です。
インディビデュアル|耐久力と総合力の真価が問われる
概要:最も長距離で行われる種目で、合計標高差は男子が1,300〜1,600メートル、女子が1,150〜1,400メートルに達します。レース時間は1時間15分から2時間にもなる耐久レースです。
コース構成:最低3回の登りと滑りを繰り返します。最も長い登坂区間は全体の標高差の50パーセントを超えてはならないというルールがあり、選手の体力配分が重要になります。また、少なくとも1区間はスキーを外して走る「担ぎ区間」が設定されています。
戦略性:持久力はもちろん、シールの脱着やスキーの装着といったトランジション(切り替え動作)の効率性、滑走技術、ペース配分の全てが求められます。
ミラノ五輪での実施:男女それぞれ実施予定です。
バーティカル|登りのみに特化したスピード競技
概要:文字通り「垂直」を意味する名前の通り、登坂のみに特化した種目です。標高差500〜700メートルを一気に駆け上がります。
レース時間:トップ選手で約40分前後で完走します。
特徴:滑降がないため、純粋な登坂スピードと持久力が勝敗を分けます。心肺機能と脚力が極限まで試される過酷な種目です。
ミラノ五輪での実施:今回のオリンピックでは実施されません。
チーム|2〜3名の連携が勝利の鍵
概要:2〜3名でチームを組み、一緒に登り滑る種目です。インディビデュアルよりも長いコースが設定されます。
ルール:チームメンバーは常に一緒に行動しなければならず、登坂時は30秒以上、滑降時は10秒以上離れてはいけません。全てのチェックポイントとトランジションから一緒に出発し、ゴールも5秒以内に揃う必要があります。
戦略性:個々の体力差をどう補い合うか、ペース配分をどう調整するかといった、チームワークが問われます。
ミラノ五輪での実施:今回のオリンピックでは実施されません。
混合リレー|男女4名のスピード競走
概要:男女2名ずつ、計4名のチームで行われるリレー形式の競技です。各選手が順番に「サーキット」と呼ばれるコースを走り、次の選手にタッチします。
コース構成:1周約15分で、2回の登りと滑り、スキーを外して走る区間が含まれます。合計獲得標高は150〜180メートル程度です。
特徴:リレー形式のため、スピード感があり観客にとっても分かりやすい種目です。男女混合チームのため、国ごとの選手層の厚さが試されます。
ミラノ五輪での実施:実施予定です。最大12カ国が出場できると見られています。
山岳スキーの観戦ポイント 勝敗を分ける一瞬のドラマ
山岳スキーは、単なるスピード勝負ではありません。さまざまな要素が絡み合い、一瞬の判断ミスや動作の遅れが順位を大きく変える、ドラマチックな競技です。
トランジションの神業|F1ピット作業のような緊張感
山岳スキーで最も重要なポイントのひとつが「トランジション」です。これはスキーを脱ぐ、シールを剥がす、スキーをバックパックに固定する、再びスキーを履く、といった一連の切り替え動作を指します。
トップ選手はこの複雑な作業をわずか数秒でこなします。シールの脱着ひとつとっても、スキーを履いたまま片手でサッと剥がし、ウェアの内側に素早くしまう技術が求められます。もたつけば即座にライバルに追い抜かれるため、F1のピット作業のような緊張感があります。
実際、ワールドカップでも、トランジションで順位が入れ替わる場面が頻繁に見られます。日本代表ヘッドコーチの松澤幸靖氏も「体格差がある中で、確実にタイムを縮められるのがトランジションの部分」と語っており、日本選手が海外勢に対抗するための重要な要素として位置付けられています。
スプリント種目の爆発力|3分間の激闘
ミラノ・コルティナ五輪で実施されるスプリント種目は、約3分前後という短時間で勝敗が決まります。スタート直後から全力で駆け上がり、滑り降りるまで、抜きつ抜かれつの大混戦が目の前で展開されます。
6名1組のヒート形式で争われるため、他選手との駆け引きも見どころです。先行して主導権を握るか、後方で体力を温存して最後に勝負をかけるか、戦略も勝敗を左右します。
一瞬のミスが命取りになるスリリングな展開から目が離せません。
超人的な身体能力|標高の高い山を全力疾走
山岳スキーの選手たちは、標高の高い山岳地帯を全力で駆け上がります。心肺機能は超人レベルで、酸素の薄い環境下でも高いパフォーマンスを維持します。
ゴール後に倒れ込む選手たちの姿からは、全力を出し切ったこの競技の激しさと崇高さが伝わってきます。観戦時に選手の心拍数データが表示されることもあり、限界に挑む様子をリアルタイムで感じられます。
安全装備の携帯義務|競技理念が反映されたルール
山岳スキーの選手たちは、競技中に必ずバックパックを背負っています。この中には、ビーコン、プローブ、シャベルといった雪崩対策装備(アバランチギア)が入っています。
これは、バックカントリーにおいて安全かつ速く滑るという競技理念のもと、携帯が必須とされているためです。また、シールをウェアの内側にしまう際に、シールが飛び出ていたり、ウェアのファスナーが完全に閉まっていない状態で滑るとペナルティが課されるなど、安全面に配慮した細かいルールがあります。
山岳スキーで使用するギア 極限まで軽量化された専用装備
山岳スキーはタイムを競う競技のため、使用するギアは極限まで軽量化されています。一般的なアルペンスキーやバックカントリー用の装備とは大きく異なり、専用設計のアイテムが使われます。
スキー板|片足600〜700グラムの超軽量設計
競技用のスキー板は、片足でわずか600〜700グラム程度しかありません。一般的なアルペンスキーが片足1,500〜2,000グラム程度であることを考えると、その軽さは驚異的です。
素材:カーボンファイバーや超軽量アルミ、特殊プラスチックなどが使われ、強度を保ちながら軽量化が図られています。
デメリット:軽量化のために素材を削ぎ落としているため、滑走中に折れてしまうこともあります。耐久性よりもスピードを優先した設計です。
価格:競技用モデルは非常に高価で、13万円前後からそれ以上の価格帯になります。
ビンディング|わずか100グラム台の軽さ
スキー板とブーツを固定するビンディングも、競技用は100グラム台という驚異的な軽さです。
機能:登坂時はヒールが自由に動く「ツアーモード」、滑降時はヒールを固定する「アルペンモード」に切り替えられます。この切り替えがスムーズにできることが重要です。
規格:TLT/TECH規格と呼ばれる専用のピン式ビンディングが主流です。
価格:10万円を超えるモデルも珍しくありません。
ブーツ|タングが省略された競技用モデル
競技用ブーツは、一般的なスキーブーツよりも全体的に薄く、軽量化されています。特徴的なのは「タング(すね当て部分)」の簡素化です。
レース用モデル:トップレベルの選手が使う競技用ブーツは、タングが完全になくなっているものもあります。保護性能よりも軽さと動きやすさを優先した設計です。
重量:片足800〜900グラム程度。一般的なアルペンブーツが片足1,500〜2,000グラムであることと比較すると、半分以下の軽さです。
価格:高性能な競技用ブーツは30万円を超えるモデルもあります。
シール(クライミングスキン)|最小限にカットされた滑り止め
スキーの裏面に貼り付けるシールも、競技用は極限まで短くカットされています。
特徴:一般的なバックカントリー用のシールは、スキーの先端(ノーズ)と後端(テール)の両方に固定具がありますが、競技用はノーズ側のみで固定し、テール側のクリップは省略されています。これにより、スキーを履いたままシールを取り外すことができ、トランジションが劇的に速くなります。
素材:モヘア(山羊の毛)やナイロンが使われ、後方へは滑らず前方へは滑る特性を持っています。
価格:競技用シールは数万円程度です。
バックパック|スキー装着フック付きの専用モデル
競技中、選手は必ずバックパックを背負っています。これは安全装備の携帯義務があるためですが、競技用のバックパックにはスキー板を素早く装着できる専用フックが付いています。
容量:必要最小限の容量に抑えられ、10〜15リットル程度が主流です。
機能:スキーを縦に背負える固定システム、体にフィットする設計、軽量素材の採用などが特徴です。
ヘルメット・アイゼン・その他の装備
ヘルメット:落石や転倒時の頭部保護のため、競技では着用が義務付けられています。通気性が良く、軽量な登山・スキー兼用の規格を通ったモデルが使われます。
アイゼン・クランポン:氷化した雪面や岩場を登る際にブーツやスキーに装着する金属の爪です。アルミ製の軽量モデルから、堅牢なクロモリ製まで用途に合わせて選ばれます。
ウェア:軽量かつ動きやすいストレッチ素材が使われ、通気性と保温性のバランスが重視されます。
日本代表選手の現状 世界との力の差と今後の課題
山岳スキーはヨーロッパを中心に発展してきたスポーツであり、日本ではまだこれからの段階です。しかし、2026年ミラノ・コルティナ五輪への出場を目指し、日本代表選手たちは着実に力をつけています。
日本のエース 島徳太郎選手の挑戦
日本男子のエースは島徳太郎選手です。2022年11月、フランスで行われたワールドカップ初戦に参加し、予選で52位という結果を残しました。
タイム差:予選1位のフランス選手が2分46秒だったのに対し、島選手は3分17秒。予選通過ライン(30位)のタイムは3分00秒で、あと17秒という位置でした。
評価:世界とのタイム差は依然としてありますが、今後のトレーニング次第で予選突破も現実味があると評価されています。
女子選手の躍進 世界ランキング30〜40位台に
日本女子は男子よりも世界との差が小さく、複数の選手が世界ランキング30〜40位台に位置しています。
主要選手:
- 田中友里恵選手:世界ランキング34位(2023年4月時点)
- 上田絢加選手:世界ランキング35位
- 滝沢空良選手:世界ランキング39位
女子選手の健闘は、日本の山岳スキー界にとって明るい材料です。
世界との力の差 パワーと滑走技術の不足
日本代表ヘッドコーチの松澤幸靖氏は「海外選手との大きな差はパワーと滑りの技術」と語っています。
パワー不足:オリンピックで実施されるスプリント種目は短時間で争われるため、持久力だけでなく瞬発的なパワーも重要です。登坂速度で海外選手に劣る現状があります。
滑走技術:海外では元々アルペンスキーのレース経験者が山岳スキーに転向してくるケースが増えています。高度な滑走技術を持った選手が増えており、日本選手は滑降区間でタイムを失う傾向があります。
経験と環境の差:ヨーロッパの選手は競技歴が長く、標高の高い山で豊富な練習量を積んでいます。高地トレーニング環境も整っており、日本との差は明らかです。
日本が勝つための戦略 トランジションの精度向上
体格差や練習環境の差を考えると、日本選手が真正面から勝負しても勝ち目は薄いと言わざるを得ません。しかし、松澤コーチは「確実にタイムを縮められるのがトランジションの部分」と指摘します。
陸上リレーの戦略:日本の陸上競技は、個々のタイムでは海外に劣っていても、リレーでバトンパスの精度を極めることでメダルを獲得してきました。山岳スキーでも同様に、スキーの脱着やシールの取り外しといった細かい動作を磨けば、タイムを縮められます。
日本人の強み:細かい所作を正確かつ迅速に行う技術は、日本人が得意とする分野です。海外勢も速いですが、突き詰めれば勝てる部分と考えられています。
国内初の日本代表合宿 白馬での強化活動
2022年12月16〜18日、長野県白馬のつがいけマウンテンリゾートで、国内では初めてとなる日本代表合宿が行われました。
目的:基本的な動作の習得、トランジション技術の向上、体力強化などが主な目的です。
意義:これまで海外でのレース参加が限られていた日本選手にとって、国内で継続的にトレーニングできる環境が整いつつあることは大きな前進です。
出場枠の獲得競争 アジア枠を巡る中国との戦い
ミラノ・コルティナ五輪では、スプリント種目の出場枠は男女各24名です。国別の出場枠はまだ確定していませんが、地域別に枠が設けられる可能性があります。
最大のライバル:アジア地域では、中国が最大のライバルとなります。中国は近年、山岳スキーに力を入れており、選手育成と強化に大きな予算を投じています。
出場枠獲得の道:ワールドカップでポイントを積み重ね、世界ランキングを上げることが出場枠獲得の鍵となります。
山岳スキーの歴史と文化 ヨーロッパの雪山文化から生まれた競技
山岳スキーは単なるスポーツではなく、ヨーロッパの雪山文化と深く結びついた競技です。その歴史を知ることで、競技の奥深さがより理解できます。
発祥の背景 山岳パトロールの移動手段
山岳スキーの起源は、アルプス地域の山岳パトロールや山岳救助隊がスキーを履いて雪山を移動する手段にあります。リフトのない時代、雪山を効率的に移動するために、登りも滑りもできる技術が発達しました。
軍事訓練との関連:20世紀初頭、山岳地帯を抱える国々では、冬季の軍事訓練の一環としてスキー登山が取り入れられました。これが競技化のきっかけのひとつとなりました。
スキーツアーの文化 何日もかけて山を縦走
ヨーロッパのアルプス地域では、雪山を何日もかけて縦走する「スキーツアー」の文化が根付いています。山小屋を転々としながら、壮大な雪山を滑り歩く冒険は、多くの登山家やスキーヤーの憧れです。
競技化の流れ:このスキーツアーの技術をタイムレース化したものが、山岳スキー競技の原型となりました。
国際組織の設立 ISMFの役割
1999年、国際スキーマウンテニアリング連盟(ISMF)が設立され、世界的な統括組織として競技の普及とルール整備を進めてきました。
オリンピック採用への道:ISMFは長年、冬季オリンピックへの正式採用を目指して活動してきました。2021年7月のIOC総会で2026年ミラノ・コルティナ五輪への採用が承認され、悲願が達成されました。
日本での普及活動 日本山岳・スポーツクライミング協会の取り組み
日本では、公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)がISMFに所属し、山岳スキー競技を統括しています。
日本選手権大会:毎年1月末頃、富山県の宇奈月スノーパークで全日本山岳スキー競技選手権大会が開催されています。2023年で第16回を迎え、国内の競技人口拡大に貢献しています。
普及の課題:専用ギアの高価さ、練習環境の不足、競技の認知度の低さなどが課題として挙げられます。しかし、オリンピック正式種目化を機に、注目度は確実に高まっています。
山岳スキーを実際に体験するには 安全に楽しむための基礎知識
山岳スキーの魅力を知ったら、実際に体験してみたいと思う方もいるでしょう。競技レベルではなくとも、バックカントリースキーとして山岳スキーの技術を楽しむことができます。
まずはゲレンデ内での体験から
いきなり山に入るのではなく、まずはスキー場のゲレンデ内で体験することをおすすめします。
レンタル装備:一部のスキー場では、ヒールフリータイプのスキーやシールをレンタルしている施設があります。まずはレンタルで試してみましょう。
ガイドツアー:初心者向けのバックカントリー入門ツアーに参加すれば、ガイドの指導のもと安全に基礎を学べます。
必須の安全装備 アバランチギアの携帯
実際に山に入る際は、必ず以下の「アバランチギア(雪崩対策装備)」を携帯してください。
ビーコン(雪崩トランシーバー):雪崩に巻き込まれた際、電波で位置を知らせる装置です。
プローブ(ゾンデ棒):雪の中に埋まった人を探すための細長い棒です。
ショベル:雪を掘り出すための軽量シャベルです。
これらは必ず3点セットで携帯し、使い方を事前に練習しておく必要があります。
単独行動は絶対に避ける
バックカントリーでは、単独行動は絶対に避けてください。万が一雪崩に遭遇した場合、単独では救助が極めて困難です。
推奨:経験豊富なガイドと一緒に行動するか、適切な講習を受けた仲間と複数名で行動しましょう。
雪崩リスクの判断 気象情報と積雪状況の確認
山に入る前に、必ず気象情報と積雪状況、雪崩リスクを確認してください。
情報源:日本雪崩ネットワーク(JAN)や各地の雪崩情報センターが発信する雪崩危険度情報を参考にしましょう。
判断基準:雪崩危険度が高い日は、山に入らない判断も重要です。
適切な講習の受講 日本雪崩ネットワークなど
バックカントリーに入る前に、雪崩対策や救助技術の講習を受けることを強く推奨します。
講習内容:雪崩のメカニズム、リスク判断、ビーコン捜索訓練、救助手順などを学べます。
団体:日本雪崩ネットワーク(JAN)や日本山岳ガイド協会などが講習会を開催しています。
山岳スキー観戦を楽しむためのポイント テレビやネット配信で楽しむコツ
2026年ミラノ・コルティナ五輪では、山岳スキーが世界中に中継されます。観戦をより楽しむためのポイントを押さえておきましょう。
トランジションに注目する
前述の通り、トランジション(切り替え動作)は勝敗を大きく左右します。スキーを脱ぐ、シールを剥がす、スキーを背負う、再び履くといった一連の動作がいかにスムーズかに注目してください。
順位変動:トランジションでもたついた選手が順位を落とす場面は、観戦の大きな見どころです。
心拍数データを確認する
放送では、選手の心拍数がリアルタイムで表示されることがあります。極限状態でどれだけ心拍数が上がっているか、ゴール後どれだけ消耗しているかを確認すると、競技の過酷さが実感できます。
ヒート形式の駆け引き
スプリント種目では、6名1組のヒート形式で争われます。先行逃げ切り型の選手か、後方から追い上げる選手か、レース展開の駆け引きに注目しましょう。
コース設定の工夫
大会ごとに、コースの登坂距離、担ぎ区間の長さ、滑降の旗門設定などが変わります。どの区間が勝負の分かれ目になるか、解説者のコメントを聞きながら理解を深めましょう。
日本人選手を応援する
日本代表選手が出場する場合は、ぜひ応援してください。世界との力の差はまだありますが、トランジションの正確さや、粘り強い走りに注目です。
山岳スキーの今後の展望 オリンピック後の競技発展
2026年ミラノ・コルティナ五輪での正式採用は、山岳スキーにとって歴史的な転換点です。オリンピック後、この競技はどのように発展していくのでしょうか。
競技人口の拡大 世界的な注目の高まり
オリンピック種目になったことで、世界中で競技人口が拡大すると予想されます。特に、これまで山岳スキーが盛んでなかった地域でも、新たに競技を始める人が増えるでしょう。
アジア地域:日本、中国、韓国などアジア諸国での普及が期待されます。
北米:アメリカやカナダでもバックカントリースキーの人気が高まっており、競技化への関心が高まっています。
若手選手の育成 ジュニア世代の強化
日本でも、ジュニア世代の育成が本格化しています。
U20カテゴリー:20歳以下の若手選手を対象とした強化指定選手制度があり、将来のオリンピック出場を目指す選手たちが育っています。
育成環境の整備:国内での合宿や海外遠征の機会が増え、若手選手が経験を積める環境が整いつつあります。
装備の技術革新 さらなる軽量化と安全性の両立
競技用ギアは今後もさらなる軽量化が進むと予想されます。一方で、安全性とのバランスをどう取るかが課題です。
素材開発:カーボンナノチューブや新素材の応用により、軽量かつ強度のある装備が開発される可能性があります。
地域スポーツとしての定着 地方スキー場との連携
日本では、地方のスキー場を活用した山岳スキー大会の開催が増えています。
宇奈月スノーパーク:富山県の宇奈月スノーパークは、全日本選手権の開催地として定着しつつあります。施設の老朽化や経営難に直面していましたが、山岳スキー大会を起爆剤として利用者増を目指しています。
地域振興:山岳スキー大会の開催は、地域の観光振興やスポーツ文化の発展にも貢献します。
よくある質問(FAQ) 山岳スキーをもっと知る
Q1:山岳スキーとバックカントリースキーの違いは何ですか?
A:バックカントリースキーは、ゲレンデ外の自然の雪山を楽しむスキー全般を指します。山岳スキー(スキーモ)は、そのバックカントリースキーの技術をタイムレースとして競技化したものです。つまり、山岳スキーはバックカントリースキーの競技版と言えます。
Q2:初心者でも山岳スキーはできますか?
A:競技レベルではなく、レクリエーションとしてのバックカントリースキーであれば、適切な講習と装備があれば初心者でも楽しめます。ただし、雪崩リスクの判断や安全装備の使い方を学ぶことが必須です。まずはガイド付きツアーに参加することをおすすめします。
Q3:山岳スキーの装備はどこで購入できますか?
A:専門的な登山用品店やスキーショップで取り扱っています。ただし、競技用の超軽量モデルは非常に高価で、取扱店も限られます。まずはレンタルで試してから購入を検討しましょう。
Q4:日本人選手がオリンピックでメダルを取る可能性はありますか?
A:現時点では、世界トップ選手とのタイム差があり、メダル獲得は難しいと言わざるを得ません。しかし、トランジション技術の向上や継続的なトレーニングにより、予選通過や上位進出の可能性は十分にあります。
Q5:ミラノ・コルティナ五輪の山岳スキーはどこで観戦できますか?
A:日本ではNHKや民放各局がオリンピックの放送権を持っており、テレビ放送やインターネット配信で観戦できる見込みです。詳細な放送予定は2025年末頃に発表されるでしょう。
Q6:山岳スキーで使うシールは何でできていますか?
A:シール(クライミングスキン)は、主にモヘア(山羊の毛)やナイロンでできています。毛並みが一方向に揃っており、後方へは滑らず前方へは滑る特性を持っています。この特性により、スキーを履いたまま効率的に登坂できます。
Q7:なぜヒールフリー(踵が浮く)タイプのスキーを使うのですか?
A:登坂時に踵が自由に動くことで、歩くような自然な動作で登ることができます。これにより、体力の消耗を抑えながら効率的に登坂できます。滑降時にはヒールを固定するアルペンモードに切り替えます。
まとめ 2026年ミラノ五輪で歴史が動く瞬間を見逃すな
2026年2月、イタリアのミラノ・コルティナで開催される冬季オリンピックで、山岳スキー(スキーモ)は初めて正式種目として世界の舞台に立ちます。
雪山を登り滑り降りるというシンプルな競技でありながら、トランジションの技術、持久力、滑走技術、戦略性といった多様な要素が絡み合い、一瞬のミスが勝敗を分けるドラマチックなスポーツです。
ヨーロッパを中心に発展してきた競技ですが、日本代表選手たちも世界との差を縮めるべく日々トレーニングに励んでいます。体格差や経験の差を、トランジションの精度や粘り強さで補い、世界に挑む姿は、多くの人に感動を与えるでしょう。
極限まで軽量化されたギア、超人的な身体能力、F1ピット作業のようなトランジション、そして雄大な雪山という舞台。これまでの冬季オリンピックにはなかった「タフさ」と「スピード感」が、私たちに新しい感動をもたらしてくれるはずです。
2026年2月、歴史が動く瞬間をぜひリアルタイムで目撃してください。

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